ミズクラゲ*4 Moon Jelly

[水母と書いてクラゲと読む]
水族館などでもお馴染みミズクラゲは日本周辺で最も一般的なクラゲの一つです。ブルーの水槽の中でふよふよと泳ぐ彼らの姿を見た人も多いのではないのでしょうか?青と白のコントラストが非常に綺麗ですね〜。私のお気に入りの一つです。

ミズクラゲは世界中の海の温帯から熱帯地域に住んでおり、主に海岸沿いで見られます。結構幅広い水温に耐えることが出来(一説には−6℃〜+30℃以上)、繁殖力も強くあちこちの海岸で大発生します。ミズクラゲは黒っぽい水の海域に良く現れますが、このような場所では塩分濃度が低くなっており、彼らはこのような環境を良く好みます。また塩分濃度が下がると傘が丸っこくなり、逆に多い時にはだら〜んと平べったくなります。塩が少ない方が気合が入るんでしょうか?

クラゲというと海で泳いでいて刺された経験のある人も多いのではないでしょうか?クラゲは刺胞と呼ばれる器官から出される針を使って獲物を刺すことで毒を送り込みしびれさせるのですが、このミズクラゲの刺胞は弱く、人間にとって全く害はありません。実際手で持っても全然痛くも痒くもないのですが、逆に彼らの体は水分を95%も含んでいるため非常にやわらかくデリケートですぐに弱ってしまいます。

ミズクラゲの傘は大体15cmぐらいなのが一般的ですが、時として直径30cmの大物が現れることもあります。傘の中央には四つの白い輪が四つ葉のクローバー型に並んでいますが、これは胃袋や生殖腺などの器官が透けて見えたものです。この模様が眼のように見えることから、『ヨツメクラゲ』の名前が付いています。この生殖腺はオスでは精巣で、メスは卵巣に当たるのですが、前者は白っぽく逆に後者は茶色がかっているためここを見ることで雌雄の区別をつけることが出来ます。

彼らは移動するときには傘をパタパタとせわしなく動かし、その姿が結構愛くるしいのですが、魚のヒレのように力強く遊泳する力は無く、主に水の中に浮かぶためにひらひらさせています。実際水槽の中にミズクラゲを入れると海と違って水の流れが無いため、泳ぎの弱いミズクラゲは沈んでいってしまいます。『もうちょっとがんばれよ!』といいたくなるのですが、もやしっ子の彼らにとって、それは無理な話のようです。
[クラゲの子供はクラゲじゃない!?]
ミズクラゲの体の表面には鞭毛と呼ばれる非常に細かい毛のようなものが生えており、ここには獲物を捕らえるための粘液が付いています。このねばっこい液で獲物を絡めとった後、鞭毛を動かすことによって胃袋に運んで消化します。

彼らの食べ物は主に小さなプランクトンで軟体動物や甲殻類、原生動物、珪藻、他の動物の卵など幅広く食べています。また大型のミズクラゲになると小魚なども捕らえて食べてしまうそうです。クラゲは腔腸動物というグループに分類されていますが、この仲間は胃袋の入り口と出口が同じになっており、食べたもの取り込んだ後、残りかすは同じ穴から外に排出します。(つまり、お食事とトイレをするところが一緒ということ。え?もうちょっと上品な話にしろって?ご迷惑をおかけしました。ごめんなさい…。)

このクラゲの食欲は非常に旺盛で、大発生してしまうとその周辺のプランクトンの生態系が影響を受けたり、漁場などでは小魚が食べられてしまい大きな被害が出てしまいます。ときとして網の中にクラゲが入りすぎると、その重みで網が上げられなくなることもあるそうです。

ミズクラゲの生活で我々と最も変わっているのが、その成長過程で生まれたばかりのクラゲが大人と同じような形をしているわけではありません。もともと生まれたばかりのミズクラゲは『プラヌラ』と呼ばれる0.2mmの小さな丸っこい塊なのですが、このプラヌラは水の中を漂い岩や海藻に付着します。その後イソギンチャクのような形をした『ポリプ』いう段階になり、更に大きくなって『ストロピラ』に変化します。このストロピラの先端から多数の『エフィラ』と呼ばれる花のような形をした小さな幼体が分離し、これが成長すると晴れて『メテフィラ』と呼ばれる小型のクラゲになります。(ああ、ややこしい…)

もともとプラヌラは大人のオスとメスのクラゲが交配することによって産まれ、このような繁殖方法を『有性生殖』といいます。これに対して岩などに付着して生活している『ポリプ』の段階では、付着先の床にくっついているところから根を伸ばし更にその根の先から新たなポリプが現れます。この新たなポリプは元のポリプと全く同じ遺伝子を持っており、いわゆる天然のクローンです。このような増え方を『無性生殖』といい、一生の間でミズクラゲ有性生殖と無性生殖を経験する非常に変わった生態を持っています。

なんとなく宇宙人じみた風貌をしているミズクラゲ君ですが、その生活は宇宙人以上の変わり者かもしれません。